ものの名前
すすきが白く光り、青空はぬけるようで
ほんとうに美しかった。
高原でコーヒーを飲んだり、
どんぐりを拾ったりする。
わたし「白いコスモス?」父「秋明菊」
わたし「矢車草?」母「ひめじおん」
…。
小さい頃、こうして父や母や姉に指差しては聞いて、植物の名前を覚えたんだっけ。
植物の名前は、わからないから後で聞こうってことはむずかしい。
だから、植物の名前を知ってるってことは
そばで教えてくれた人がいたってことだ。
昔、一つ下の青年と公園を散歩していて、
これこれが咲いてる、というと
ぜんぜん花の名前を知らない、といった。
その言い方にすこし混じった
すねたようなさみしさをわたしは
聞き逃さなかった。
(彼のことを好きだったのだと思う)
男の子だからもあるのかもしれないけど、
彼の母親が病弱だったせいでも
あるのかもしれない。
・・・
ちなみに、椎の実をポケットにいれて
ケーキを買って親友の家に立ち寄り、
「はい」と渡したところ、
クヌギだねと言われた。
たぶん彼女が言うからにはクヌギなのだろう。
こうして植物の名前を知っていく。
ちいさな子供だった頃のように。